■相談員から
「子ども孝行」と「親孝行」

 高齢者住宅情報センターに相談に来られる方々はひと昔前なら未婚の方や子どもさんのおられないご夫婦が多かったのですが、ここ10年は子どもさんのおられる方のご相談が増えています。そして口を揃えて「将来、介護が必要になった時に子どもに迷惑をかけたくない」と。特に息子さんしかおられない方は「お嫁さんにはねぇ」と切実です。
 そして元気な間に自力で高齢者住宅を探して住み替えようとされる時、ネックになるのが意外や意外、子どもさんの存在なのです。
 夫に先立たれた75歳のNさんは息子が二人。自身が舅姑の介護を経験しているので、息子達とは同居して迷惑をかけたくないし、一人で自由な生活を楽しみたいと高齢者住宅を探し始めました。「ここなら夫が残してくれた資産で入居でき、毎月も何とかやっていけそう」と気に入ったあるホームへ申し込みました。保証人のことがあるので長男に話したところ「老人ホーム?! まだ元気なのにオフクロは何を言い出すんだ。そんな大金使うなんて、騙されてるやろ」と頭から猛反対。
 子どもに資金を出してもらうわけでなく、お父さんの相続分は渡したし、少ない私の遺産をアテにしているのかしら……忸怩たる思いのNさん。それでも息子との縁を切るわけにはいかないので取りあえずキャンセルしました。が、どうしても納得できず「貴方は介護の大変さがわかっているの?私がホームに入ったら、K子ちゃん(嫁)が一番安心するわよ。今どきのホームは貴方が想像しているような暗いイメージじゃなくて、皆イキイキと暮らしているのよ。一度見学してみてよ」と息子を説得。結局は自分が選んだホームに入居を決められました。
 N子さんは「私に介護が必要になって息子があちこちのホームを探して走り回るのは大変でしょう? 私が自分で選んで入居しておけば、介護難民にはならないのよね。自分で決めることが<子ども孝行>よ」としみじみ話されます。
 当初は反対していた息子さん達も「家も処分してオフクロの好きにしたらいいよ。俺達も転勤があるかもしれないし、何かあったら安心だよな。これで<親孝行>させてもらうよ」と納得したそうです。
 高齢者住宅の入居については子どもさんや兄弟、友人など周囲の反対は付き物です。けれど反対だけでは問題の解決になりません。少しでも自立した生活を長く続けるために取るべき手段を考えてみませんか。

米沢なな子(情報センター大阪 センター長)