老人ホームは嫌いでも、避けては通れません。

 子どもがいないMご夫妻が、有料老人ホームへ入りたいと相談に来られました。費用面では問題ないのですが、「私たちはサークル活動などが苦手なので、仲間はずれにされますか?何もしなければ呆けますか?」と不安そうに聞かれます。
おひとりさまのK子さんも友達に「早くホームへ入ったら、上げ膳据え膳でボケてしまうでぇ」と釘を刺されたと。これ、間違いです。
 お元気な間に入居する老人ホームは決して上げ膳据え膳ではありません。食堂を使えば食事の支度は不要になりますが、掃除、洗濯などの家事をこなし、買い物に出かけたり、友達と会ったり、今までの生活と何ら変わりません。よくホームへ見学に行ったら誰にも会わなかった、という方がおられますが、普通のマンションと同じなので、サークルはありますが、皆が見える場所で集まって何かしているわけではありません。介護施設では食堂などに集まってアクティビティをしていますが、元気な方向けのイベントとは雰囲気が違います。
 自立で入居する高齢者住宅と介護が必要になって入れてもらう介護施設を混同している人が大勢います。そういう種類があることすらご存知ない方も。設備や仕組み、生活パターンも全く違うのですが、「老人ホーム」というひとくくりになっています。  
 これは残念ながらマスコミの世界もそうです。「老人ホーム特集」は人気があるようですが、若い編集者やディレクターは締め切りに追われて番組を作るので、できたものはちぐはぐなものが少なくありません。高齢者住宅への関心が高まっている中、極端に良いこと、悪いことではなく公平な情報を提供してもらいたいものです。
 最近よく耳にするのは、子どもが「ひとり暮らしは無理だろう」と老人ホームを探してきて入れてもらったものの、周囲に認知症の人や重い介護状態の人が多く、気が滅入っているというご相談です。介護が必要な方向けの高齢者住宅は圧倒的に数が多いので、子どもは訳が分からず“近いから”“手頃だから”という理由だけで選んでしまうことも多いのです。逆にしっかり24時間の見守りがある介護型が安心なのに自立型に入って孤立してしまう方もおられます。
 とかくマイナス面ばかりが取り上げられる高齢者住宅ですが、プラス面もたくさんあります。正しい知識がないと高齢者住宅選びは難しいものだとつくづく思います。

高齢者住宅情報センター 大阪センター長 米沢なな子